またテュール夢を書き始めました!
これでオッタビオのキャラクターをつかんで、まとめっぽくSTRANGE WEEKを書くのだ……と目論んでいたのですが、STRANGE WEEKをサイトにUPしてからかなり経っていることに気がついて、ああもうそんなになったのかぁ……となんだかさびしい気持ちになりました。はよ続きを書きだそう。
でもあれですね、実力はともかく、文章を書くというのはすごく楽しいことですね!
もう一生パソコンの前に座りこんで夢なり文章なりを書いていたいです。そんな仕事ありませんか。ありませんよね。
ご飯よりも睡眠よりも外出よりもお風呂よりもトイレよりも、なによりもパソコンで文章を書いているのが好きなのですが、学生生活を送っているとはいえこれではあまりにニートまっしぐらではないかと最近危機感を持ちはじめました。
もし人生にリセットボタンがあるなら、次はもっと自信を持てるような自分になって、動物や魚や虫をもっと好きになって、酪農に従事し、老いて、牧草に寝転がりながら、眠るように死んでいける人生にしたいです!
つづきでそのテュール夢の文章を一部載せています
※名前は花子になっています
※オリジナルのキャラクターが微妙に登場しています
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とうてい信じられなかった。ザンザスはきっと嘘を言っていて、自分をからかうためにこんなことをしているのだと思った。
でも、ザンザスの言葉が心にひっかかって離れない。まがいもの。偽物。
「……どうしてあなたにそんなことが分かるの」
ややあって花子は口を開いた。
「あなたはテュール本人じゃないのに。偽物だなんて勝手に決めつけたりしないで」
「オレには分かる!」
いきなりザンザスが悲鳴のように叫んだ。
花子はびくりと肩を震わせた。ザンザスの赤い目はぎらつき、いまにも火を噴き出しそうだった。
「なにも知らない貴様とは違う! オレには分かる! あいつは偽りばかり吐き散らす、とんでもない偽善者野郎だ! いつでも自分が正しいと思ってやがる、大嘘吐きの亡霊だ!」
ザンザスはまつわりつくような視線を花子に向けた。
「そう、花子、貴様も騙されているだけだ。あの古狸のひとりよがりなお情けにな」
「それは……いったいどういう意味」
「そのままの意味だ、馬鹿め」
ザンザスがゆっくり近づいてくる。花子は我知らず胸の前で手をくみあわせて、指輪を握りしめていた。嫌な汗が背中を伝って落ちる。ともすれば、今にもふらついて倒れてしまいそうだった。
「貴様にいいことを教えてやる」
立ちつくしている花子の眼前まで歩いてくると、ザンザスは優しいといえるくらいの笑みを浮かべ、息のかかる距離でささやいた。
「テュールはおまえが何者であるか知っているにもかかわらず、その事実をおまえに教えない。それはおまえをひどく傷つけるものかもしれないからだ。だがそんなのはあいつの自己満足に過ぎねぇ。真実はより早く知らされるべきであり、おまえには当然その権利がある、そうだろうが?」
赤くかがやく瞳の奥で、悪意がうごめいた。
「だから、あいつの代わりにこのオレが教えてやる」
「わたしが、何者なのかを……?」
ひっそりと聞き返した花子に、ザンザスはうなずいた。
◆
「花子?」
花子は起きあがり、とっさに身構えた。
すぐそばでがさがさと草が鳴る。現れたのは、テュールではなく、茶色い目をぱちくりさせているオッタビオだった。
わたしを連れ戻しにきたんだ。テュールに頼まれて。
「どうかしましたか? ――泣いているのですか?」
「来ないで!」
花子は叫んだ。近づいてこようとしていたオッタビオが足を止めた。
「どこかへ行って! もうわたしに構わないで! ほうっておいて!」
オッタビオは花子の様子をうかがっているようだった。危害は加えないとでもいうように両手のひらを胸の前にかかげて、すこしずつ近づいてくる。花子は刺すような目で彼を睨みつけていたが、じりじり距離を縮めてくる彼に、しだいに怒りよりも恐怖がこみあげてきた。
そんな花子を察してか、オッタビオは優しげな笑みを浮かべた。
「花子、だいじょうぶ。怖がらないでください。私はただ、あなたが泣いているのが辛くて耐えられないだけです」
そう言ってしゃがみこみ、目線をあわせながら手を伸ばしてくる。
「なぜ泣いているのか……私に教えてくださいませんか」
手が、花子の肩に触れた。
花子は反射的に腕をふりあげた。
「あ……」
にぶい感触に花子ははっと目を開いた。
拳の一発が、まともにオッタビオの額に当たったのだ。はずみで眼鏡が飛んで、地面に転がっていた。オッタビオは唇を引き結び、真剣な表情で花子を見つめた。額の端からたらりと血が流れだした。
◆
「……あなたがいなければ、わたしはまたひとりぼっちになってしまう」
花子はオッタビオの肩にすがった。
「お願い、そばにいて。他にはなにもいらない。そばにいてくれるだけでいいの、オッタビオ、わたしをひとりにしないで」
「ずっとそばにいますよ」
頬にかかる吐息のあたたかさを感じる。日ざしと、かすかな香水のにおいがする。
花子はくたくたと彼の胸にもたれこんだ。腕が背中にまわってくると、まぶたが重くなり、眠るように目を閉じる。
「そう――ずっと、ずっとだ……」
◆
ザンザス。
彼がどこから来たのか知るものはいない。
ある日、ボンゴレ九代目が実子として組織へ迎えいれるために連れてきたのだ。どこで生まれ、どこからやってきたのかも分からない、それどころか、本当に実子なのかすら疑わしい赤い瞳の子どもに対して疑念の声をあげる人間は数多くいたが、彼を受けいれるか否かという議論は、九代目に諭されるような形で一応の決着がついた。なにより、その子どもみずから、自分はボンゴレの血をひいているブラッドオブボンゴレだと証明してみせたのだ。
そう、その子どもには、特別な<炎>の力があった――
「目の前であれほどすばらしい炎を見せつけられては、誰もが納得するしかなかった。わしを含め、会合に出席していた幹部の多くは、ザンザスの炎を目の当たりにして絶賛すらしたものだ」
ジョバンニは遠い日を懐かしむように目をほそめた。
花子は壁にもたれながら彼の話に耳をすましていた。ブラッドオブボンゴレや炎の話を聞くのは苦痛だったが、今は聞かなければならないような気がしていた。
「さて、いよいよ正式にザンザスを迎えいれることとなった。しかし実子を『迎えいれる』というのもおかしな表現だからの、さしずめいるべきところへ帰ってきてもらったとでもいうのが正しい表現なのだろう」
ザンザスは九代目の息子として育てられ、ある時期を境に、独立暗殺部隊ヴァリアーの屋敷へ預けられることになった。そして彼を一人前の男に育てあげるために、ヴァリアーの隊長である剣帝テュールと副隊長のオッタビオが教育係を買ってでた。
それからザンザスはヴァリアーに引きとられ、九代目の実子としてそれ相応の名を挙げていくことになる。これに不満を持ったのは、かねてよりボンゴレの次期当主と噂されていた、九代目の甥たちだった。
フェルーミ家の長子エンリコ、おなじくラニエリ家の長子マッシーモ、フェリーノ家の長子フェデリコの三人は、ボンゴレの次期ボスの座をめぐって水面下で火花を散らしている状態にあった。
後継者を決定するのは、ボンゴレの現当主と、有事には当主に次ぐ権限を有することのできる外部組織CHEDEFの門外顧問であるが、彼らの意志を動かすためにも、彼らをとりまく人びとをすこしでも多く自分の側へ引き入れることが不可欠だった。
だが、そこへザンザスが現れた。自分は九代目の実子だというほんの幼い子どもが、それまで甥たちが我が物としていたあこがれや羨望の眼差しをほとんど自分のものにしてしまったのだ。
ただ、実子というだけで!
甥の三人が不満をあらわすのは当然だった。
エンリコ、フェデリコ、マッシーモ、そしてザンザス。四人のうち誰を支持するかで組織は分断された。多くの者は九代目実子であるザンザスを支持し、それに甥の三人の支持者がつづく形となった。
怒りや悲しみが誤解を生んだ。権力への欲望、陰謀が渦を巻き、憶測が憶測をよんだ。誰もが腹の底をさぐりあい、相手を疑い、蹴落とすために必死になった。
「そして、ある悪い噂がとびかった」
「悪い噂……?」
「ザンザスは九代目の実子ではない、彼の母親は、東から流れてきた金目当ての娼婦だ、というものだ」
ザンザスの側についていた、その噂を耳にしたものの大半は、誰かのでまかせだ、でっちあげだと言ってほとんど相手にしなかった。
だが、当のザンザスは違った。この噂を誰よりも気にして、噂をふっかけてきた人間に暴行し、瀕死寸前の怪我をおわせるほどだった。テュールの咎めにもザンザスは不服そうに口をつぐむばかりだったという。
これには母親の死も関わっているらしかった。
ザンザスが九代目に引きとられ、ヴァリアーの屋敷へと送りだされたとき、彼の母親もつきそっていたのだ。しかしこの時には、もとより病気がちだったらしい彼女はとうに衰弱しきっており、しだいに食が細って、寝床に伏せている時間も長くなった。この悪い噂が流れたのは、彼女が死んでほんの数日後のことだった。
「わしは医者としてザンザスの母親の治療にあたっていた。彼女を亡くしたのは辛いことだったが、誰より落ちこんだのはザンザス本人だったのだ。わしはできる限りせいいっぱいの手を尽くしたつもりでいたが、ザンザスに責められて、酒をあおらずにはいられなかった。テュールは気に病むなと言ってくれたが、わしはしばらく年甲斐もなく荒れたよ」